ドローン外壁診断の現場手順を完全公開|依頼〜撮影まで流れで解説
「ドローン外壁診断ってどうやって仕事を取るの?」「実際の現場では何をするの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事は、こちらの動画をもとに作成しています。
依頼の受け方から、現地調査・道具の準備・実際の飛行撮影・打診調査まで、現場のリアルなノウハウを一記事で解説します。
そもそも「ドローン外壁診断」とは
マンションやビルの外壁は、建築基準法第12条により定期的な調査が義務付けられています。2022年4月からは、ドローンの赤外線カメラを使った調査が国の定期報告制度で正式に認められました。
仕組みはシンプルです。外壁タイルが「浮き」ている箇所は空気層ができ、健全な部分と熱の伝わり方が異なります。その表面温度の差を赤外線カメラで撮影して浮き・剥離を検出します。
足場不要・高所作業なし・短期間という特性から、従来の打診調査に比べコストが大幅に削減できるため、管理会社やビルオーナーからの需要が急増しています。
Step 1|受注前に確認すること——建物構造と依頼目的

依頼が来たらまず見積もりを作ります。ここで最初に確認すべきなのが建物の構造です。
赤外線に「向く建物」「向かない建物」がある
| 構造 | 赤外線の適性 |
|---|---|
| RC造(鉄筋コンクリート) | ◎ 適している |
| ALC・パネル系 | △ 反応が出づらい |
| 監式工法仕上げ | △ 反応が出にくい |
タイル貼りの建物でも、構造や工法によっては赤外線診断が難しいケースがあります。必ず仕様書や設計図書を確認することが鉄則です。
図面は古いもの(新築当時)と現状が異なっている場合もあるため、改修後の詳細資料もあわせて確認しましょう。
依頼者が何を求めているかもヒアリングする
- タイルが落ちそうなので見てほしい(事後対応)
- 建築基準法の法令点検(12条点検)のため
- 落下してしまった後の調査
本来は「落ちる前の定期診断」が理想ですが、事後対応の依頼も実際には多いようです。目的によって調査範囲や報告書の内容が変わるため、最初のヒアリングが重要です。
Step 2|現地調査の進め方

見積もり前に必ず現地調査を行います。ドローンが飛行できるかどうかは、実際に行ってみないと分からないことが多いためです。
現地に持参するもの
- 衛星写真・Googleマップの印刷物(図面をまだもらっていない段階での代用)
- メジャー(柱・壁などのサイズ測定)
- 打診棒(浮きの音確認と構造確認)
- 双眼鏡(上部の目視確認)
- レーザー距離計(BOSCHのレーザー表示タイプが特におすすめ)
- 数量表・仕上げ表(塗装・コーキングの種類確認)
現地で確認すること
1. ドローンが飛行できる環境かどうか
航空法に適合しているかアプリで確認します。また現場の物理的な環境も見ます。
- 離着陸スペースの確保
- 施設間の廊下など高さ制限があって作業車が入れない箇所の有無
- 北面は日当たりが少なく赤外線の反応が弱い→作業車での打診が必要な場合も
- 北面でも山に面している建物は注意。紫外線は少ないが、花粉や水分など自然物の影響を受けやすく、南面より劣化が進んでいることがある
2. 赤外線が使える面かどうか
季節・時間帯によって太陽の角度が変わり、バルコニー内壁に影が映るケースもあります。オーナーの許可があればバルコニーへの立ち入りを検討します。
3. 劣化状況の目視確認
現地調査の時点ですでに調査は始まっています。手すりの下のひび割れは手すり根本の浮きサインであることが多く、こうした気づきを記録しておくことが重要です。
また、アーチ形状で縦目地のタイル貼りをしている外壁を見つけたら「監式工法」の可能性を疑いましょう。仕様書がない段階でも、こうした外観の特徴で構造を推測できるようになると現場判断のスピードが上がります。
現地調査の段階でもうある程度、劣化の具合をメモしながら見ていく。フライトルートもこの段階で頭に入れる。
県外案件で現地に行けない場合
- Googleストリートビューで建物周辺を入念に確認
- 「太陽の奇跡」アプリで時間帯ごとの日当たりを確認
- それでも実際の現地確認が推奨
Step 3|道具・機材の準備

現場が決まったら機材をそろえます。ドローン外壁診断では2種類のドローンを使い分けるのが基本です。
ドローン①:産業機(赤外線カメラ搭載)
- 使用目的:外壁の浮き・温度変化の検出
- 飛行距離:壁面から約10m
- 赤外線カメラで温度分布を撮影
ドローン②:可視光カメラ機(Mavic 3系など)
- 使用目的:ひび割れ・汚れ・劣化の詳細記録
- 撮影距離:壁面から約5m(分解能確保のため産業機より近い)
- RAWで撮影→色補正で細部まで鮮明に
JPEGで撮ると拡大した際に劣化が目立つため、可視光はRAW撮影が鉄則です。
その他の必須装備
| 機材 | 用途 |
|---|---|
| 予備バッテリー・ポータブル充電器 | 電源確保(外部電源に頼りすぎないため) |
| インカム(ヘッドホン式・HollyLand推奨) | 操縦者と補助者の連携 |
| 風速計 | 飛行可否の判断(目安:5m/s超えたら要検討) |
| ランディングパッド | 土・砂地など地面の状態不明時のため |
| ホワイトボード | 何階を撮影しているかの目印(データ整理用) |
| 救急箱・消火器 | 安全対策 |
| 飛行申請書類・保険証書 | バインダーにまとめて持参 |
| SDカード収納ボックス | 複数SDの管理用 |
| サングラス | 上を向く作業が多いため |
Step 4|飛行前点検のチェックポイント

離陸前に必ず以下を確認します。
産業機(赤外線搭載)の場合
- 機体外観の確認(ネジ・アームのセット)
- 電源ON後のチェック
- 信号ロストアクション(ヘルセーフ機能)が設定されているか
- 送信機モード確認
- 障害物回避がブレーキ設定になっているか
- FPVモード→通常カメラモードへ切り替え
- ファームウェア・リモートID・GPS確認
- カメラの動作確認(写真・動画の両方)
- 赤外線カメラ:ワイドカメラ・ズーム・赤外線のチェックマークが全部入っているか確認
赤外線カメラの設定
- パレット(色表示):レインボー推奨
- 温度幅:最初はオートでOK(不具合箇所が見えてきたら手動で調整)
- FFC(センサーキャリブレーション):撮影前に必ず実行してリセット
- 保存形式の確認(赤外線画像が保存されているかチェックマークで確認)
- レーザー距離計の設定を必ずONに
Step 5|実際の飛行・撮影のポイント

産業機(赤外線)での撮影
離陸前は必ず安全確認の掛け声を行います。
「右よし、左よし、前よし、後ろよし、上空よし、足元よし。問題ありません。プロペラを回します。」
撮影時の注意点
- スパンごとに撮影:1スパンに1枚止まって撮影
- 必ず止まってからシャッターを押す(移動中の撮影はブレの原因)
- 撮影構図はトレードオフ:外が少し映るように撮ると位置把握がしやすい。壁面のみに絞ると温度幅が安定して浮きが読みやすくなる。状況に応じて使い分ける
- 階を上がるときは「別の景色を1枚挟む」:上昇前に壁以外の風景をワンカット撮影することで、後のデータ整理で何階のデータかが一目でわかるようになる
- ホワイトボードに「今何階を撮影中か」を書き、機体から見えるよう掲げることでも同様の仕訳効果が得られる
補助者の役割
- 周囲の安全確認
- バッテリー残量のチェック
- 足元の障害物を操縦者に報告
- 機体の位置・傾きを報告(右にずれていく・前に進んでいるなど)
対面飛行のNG操作
撮影が端まで終わったときに、対面方向に機体を向けて戻るのはNGです。操作が逆転してミスにつながります。撮影後は機体の向きを変えず、横スライドで元の方向に戻すのが安全な操作です。
可視光カメラ(Mavic 3系)での撮影
カメラ設定
- ISO:100〜200
- 絞り:F2.8
- シャッタースピード:やや暗めに設定(面ごとに調整)
- 記録形式:RAW(またはJPEG+RAW)
壁面との距離は約5m。Mavic 3シリーズやMavic 3 Thermalにはレーザー距離計が非搭載のため、別途BOSCHのレーザー距離計(画面上でレーザー照射ポイントが確認できるタイプ)を用意するか、補助者が先に壁に近づいて距離を掴む方法をとります。
Step 6|飛行後の打診調査と記録

撮影が終わったら飛行記録を必ず残します。操縦者が記録をつけると操縦への集中が落ちるため、記録係と補助者を分けておくと効率的です。
打診調査で浮きを確認する
打診棒で壁を叩くと、浮きがある部分とない部分で音が明確に違います。
- 浮き:こもった音・低い音
- 健全:詰まった音・高い音
この打診調査は現地調査の段階から始まっており、「この辺に浮きがありそう」という情報を事前に持ってから赤外線撮影に臨むと、解析の精度も上がります。
打診棒×赤外線の「キャリブレーション」
打診調査にはもう一つ重要な使い方があります。その建物固有の温度変化の”基準”を取ることです。
手が届く範囲に浮きが確認できた箇所を打診棒で叩きながら、同時に赤外線カメラで温度変化を観察します。「この建物では何℃の温度差で浮きが出るのか」を把握することで、上空からの赤外線データを解析する際の判断精度が上がります。
この作業をキャリブレーションと呼び、撮影前の重要なひと手間として現場で行われています。
まとめ|ドローン外壁診断は「準備8割・撮影2割」
今回の実演動画から見えてくるのは、現地調査と事前準備の重要性です。
| フェーズ | ポイント |
|---|---|
| 受注前 | 建物構造・工法を仕様書で確認。RC以外は要注意。目的によって調査内容が変わる |
| 現地調査 | ドローン可否・日当たり・劣化状況を総合確認。外観から監式工法を見分ける |
| 機材準備 | 赤外線+可視光の2台体制。レーザー距離計はBOSCHを別途用意 |
| 飛行撮影 | 止まって撮影・階切り替え写真で整理しやすく・対面飛行はしない |
| 打診調査 | 現地調査から始まっている。キャリブレーションでその建物の基準温度差を把握する |
次のステップは、撮影したデータの解析と報告書作成です。「何が映っていて、何が問題なのか」をどう読み解くかが、この仕事のもう一つの専門性になります。
監修者紹介

名前:堀 貴博(35)
誕生日:1990/12/13
ドローン歴:5年(ドローン塾 大分校代表)
実績:マンション・集合住宅・大型商業施設・旅館などでの外壁調査の経験あり。
施工写真グランプリを2回受賞。
Youtube登録者数約3000人。
SNS総フォロワー数約5000人。
会社:(有)堀防水工事
創業年:1989年
会社所在地:大分市寒田
事業内容:屋上防水工事・ベランダ工事・外壁補修工事・ドローン点検

名前:川東昌広(39)
趣味:ガンダム・ゴルフ・妻
ドローン歴:1年(ドローン塾 大分校講師)
資格:二等無人航空機操縦士・2級建築施工管理技士・1級防水技能士・ゴンドラ特別教育修了証・高所作業者運転技能修了証
実績:外壁調査・補修工事
→面積累計約500,000㎡
ドローンで旅館などの外壁調査の経験あり。
マンション、集合住宅、公共施設、大型商業施設調査
会社:(株)SK技研
事業内容:外壁リフォーム事業・ドローン事業・プラント事業

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